最近の高齢化社会に伴って肩の骨折特に表題の上腕骨近位端骨折は増加傾向です。
他にも脊椎圧迫骨折、大腿骨頸部骨折、前腕骨遠位端骨折は頻繁に遭遇します。
上腕骨近位部骨折は手術や保存療法など適切な治療法が求められます。
しかし目的は同じです。骨折前と同じような機能の獲得、合併症を起こさない。
そして骨も癒合するという至極当たり前ですがなかなか難しいゴールなのです。
当院では以前より転位の少ない骨折の方には保存療法をお勧めしています。
ずいぶん前ですが石黒先生が早期運動療法として下垂位での振り子運動を報告され
大変驚かされたものです。そして私も本棚をひっくり返して探してみたら
2010年版雑誌に石黒先生の投稿記事がありました。
適応として簡単に述べますとあまりひどくない多くの方、立位が保持でき、前屈姿勢も
可能そして最も重要な事はこの方法を理解し認知機能に問題ない方ということを
述べておられます。
当院での最近の患者さんのご紹介です。80歳代女性、認知機能正常で明るい方です。
骨折は転位も少なく保存療法の適応です。
さっそく石黒式振り子運動を説明し腫れの強い1週間は固定そして
それ以降患者さんの不安を取り除くためまず病院で振り子運動を開始しました
不安が1週間もしないで払拭できましたので前屈位での振り子運動を積極的に
行ってもらいました。
4週間後のレントゲンで骨癒合を認めました。
この時から自動運動を開始。(通常はもう少しかかります)
4週間でここまで動きます。痛みもほとんどありません。
この方は特に優秀ですが肩を動かすのに重要な腱板もエコーで覗いてみました。
80歳代にしてはとても優秀な腱板で問題ありません。
肩の機能回復には早期運動による骨の癒合、癒着の防止が重要であるとともに
もう一つ腱板機能も深く関係しているのでしょう。
もう少し肩甲骨回りも含めた運動療法を行えばもっと良くなるでしょう。
この時点でとても喜んでいただいたのが何よりでした。
もちろん手術の必要な方もたくさん見えます。
そして手術しなくても満足できる生活を再獲得できる方も大勢いらっしゃいます。
お一人ずつ状態をよく考え治療方法を選択するのはとても大事です。
最後までお読みいただきありがとうございました。