下肢の骨折や靭帯損傷で固定や手術を行うことはよくあります。
しかし合併症として深部静脈血栓は特に注意が必要です。
特に急にふくらはぎが腫れたり、圧迫痛があるときは要注意!
直ちにエコー検査が必要と考えます。
腫脹した足はエコー画像悪くなりがちで。まず血管の横断像です
動脈の上にある静脈が白っぽく見えます。
ここで圧迫テストを行います。動脈壁は厚くつぶれにくい。静脈は
逆につぶれやすい。この特性を用いて調べます。
なんとこの方は動脈がつぶれ静脈はびくともしません。
血栓で内腔がつぶれない状態が考えられます
D-ダイマーを測定しました。
結果は10オーバー(正常値は1以下)ただしDダイマーは炎症や、加齢
悪性腫瘍でも高くなり決め手にはなりません。しかし低ければ血栓は否定的です。
今回は高齢、骨折により行った下肢の装具固定、急速な腫脹など身体所見もそろっています。
まずは全身症状の把握、胸部レントゲン、心電図、心エコーによる心臓右室負荷所見の
検索も大事です。なぜならばまれに肺血栓塞栓症という重篤な合併症もあるからです。
そして胸部造影CTが必要なこともあります。
最近は抗凝固剤がよく使われます。
1週間後 再び圧迫テスト(抗凝固剤は服用中)
今度は表層の静脈が圧迫テストでつぶれますが
動脈はつぶれません。正常ですね。血栓がこの部分はなくなっています。
もちろん詳細な観察は必要ですがとりあえず改善傾向であることがわかります。
深部静脈血栓症は肺血栓塞栓症の予防が特に大事です。つまり早期発見適切な治療が
極めて重要です。
またここに至らずも放置した場合要するに自然経過と治療した人では将来の慢性静脈不全、
深部静脈血栓の再発などでも差がありますので早期の診断が重要です。
もちろんエコー診断はこの疾患のかなめではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。