以前にも報告した上腕骨近位端骨折は高齢者の転倒事故などによる
よく見かける外傷です。
治療は転位の大きなものは手術的治療が推奨されています。
当院にても同様な対処をさせていただいております。
しかし転位は大きくとも手術できない方、また手術は受けたくない方も
少なからずいらっしゃいます。
今回は大結節部が転位しいわゆる3パート型骨折で手術適応もある方です。
手術は受けたくないとの強い希望あり基幹病院よりご紹介がありました。
80歳男性
まず初診時レントゲン
痛み腫脹が強く定型的な石黒法(早期振り子運動)は困難でしたが
なるべく転位が進まないように振り子体操を少しずつ行っていただきました
3週間後レントゲン
幸い大きな転位なく骨癒合も確認できます。
しかしこの時点で
前方挙上40度、外転30度、伸展0度、外旋20度と高度の拘縮
これでは日常生活に支障がありすぎます。
リハビリでも痛みが強くなかなかうまくいきません。
しかし外傷後3~4週間では筋膜リリースにて癒着剥離が
有効なことがあります。特に後方の棘下筋/関節、肩甲骨の癒着は
症状悪化の一因です。
今回棘下筋、烏口上腕靭帯、小胸筋、三角筋下滑液包の液性リリースを
エコーガイド下に施行し(かなり除痛ができました)リハビリを行いました
2か月後肩エコー所見
骨片はあるものの腱板の腫脹は軽減しています。
そして運動域は
外転角など少しものたりませんが日常生活には痛みもなく満足
していただけました。
自分の考える上腕骨近位端の保存療法
1.転位の大きなものは可能ならば手術
手術できない時
2.転位を可能な限り小さくする(早期の十分な振り子運動)
3.可能な限り骨癒合を早く促す(早期の十分な振り子運動)
最後に適切な時期にエコー下筋膜リリース(癒着剥離)
これは非常に有効なこともありエコーガイド下注射に熟練した
医師が行えば即効性があることもあり是非試してみるべきと
思います。
全例このようにうまくいくとは思っておりません。
このような患者さんには時機を逸せず適切な治療を行うことが
重要と思われます。
療法士任せの治療のみではなく医師が治療に直接介入する
ことも大事ではないでしょうか?
注)当院では手術療法が一般的に推奨されている場合
手術をお勧めしています。
転位軽度、何らかの事情により手術できない方にこのような
治療法も提案させていただいております。
最後までお読みいただきありがとうございました。